家族の統一性と機能

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第1章は、家族の概念を歴史的にさかのぼって、古代中国の同居。同財0同餐(住居と財産と食の共同)の概念、古代ローマのfamilia(家父長制家族)の概念、古代ギリシアのoikos(「家」と「財+産」)の概念、およびマックス/・ヴェーバーのHausgemeinschaft(家共同体)の概念など、古代の家族についての考察から出発し、それらを総括することから、「成員間の近親性」、「家を中心とする生活の共同性」、およびその「生活共同の日常性」の二つ(p.17)が、家族概念の不可欠の要素として抽出されている。かくて清水は、「家に限定せられた親族の日常的生活共同体」という家族の定義に到達する.

第2章は、家族の形態についての分類を主題としている。まず取り上げられるのは、「大家族」対「小家族」の区分である.清水によれば、大と小の区別に関して重要なのは、単なる人数よりも世代数である。この区分は、おもにドイツの学者たちによってなされてきたもので、 クーノウ、 ミュラーーリヤー、 トゥルンワルト、 フィアカントの名があげられるが、他方でアメリカの人類学者マードックによる「核家族」対「複合家族」の区分もこの考え方に属するとされる。この大と小という区分を清水は形式的分類と呼び、これを歴史的分類と対置する.清水が歴史的分類としてあげるのは、モーガン説、デュルケーム説、 ミュラーーリヤー説の三つである。モーガンは、家族形態の分類原理を婚姻形態に求め、「集団婚」から「対偶家族」および「家父長家族」を経て「単婚家族」にいたる家族進化の発展段階を考えた。デュルケームは、祖先を同じくする無定形の外婚氏族を共通の出発点にして、父系の「未分家族」を経てローマの家父長家族にいたる系列と、ゲルマンの父系優先的両系家族を経て西欧の近代的な婚姻家族にいたる系列を考えた。ミュラーーリヤーは上記のように大家族と小家族の区分を立てたが、 これを歴史的な家族発展の段階としての「親族時代」「家族時代」「個人時代」という三区分と結びつけた。清水はそれらがどれも、発展段階の最終形態は小家族である

近代家族に帰着しているとし、歴史的分類も結局形式的分類としての大家族・小家族の区分に立ち返ると結論する。そこで家族形態の清水分類は、大家族として「未分家族」「家父長家族」「直系家族」の三つ、小家族として近代的な「婚姻家族」をあげて、 この四つが歴史的に重要な家族形態である(p.95)、 との結論を導く。

第3章は、近代以前の家族において家族の「統一」を実現していたものは何か、 また近代化によってその統一はどうなったか、 という問題の考察である。古代の大家族に関して、メインは古代ローマを典型とする強力な「家長」権が団体としての家族の統一性を担っていたと主張し、クーランジュは古代家族のこの統一性を実現していたものは祖先の霊を祭壇に祀って信仰する家族宗教であったとして、家長権もまたその起源を家族宗教に求めることができると主張した。これらに対して清水は、古代ギリシア・ローマを特徴づけていた家族宗教は、西洋中世においてはすでに消滅していたと指摘し、これに代わって世代を超えた家族の統一性を実現していたものは「家族精神」であったと主張する。清水のこの「精神」の概念は鈴木榮太郎に由来し、それは伝統のもつ全体性の強い拘束力をさすが、それには統一性の物質的基盤が必要である。清水はそのようなものとして、祖先から伝えられてきた竃と土地と家屋の三つをあげる。これらに加えて、大家族を支えていたもう一つの要因は、機能的に未分化な生活共同体の複合体であった。以上を要約すると、大家族を成立させていた要因は、第一に家長権、第二に家族精神、第三に祖遺の財物としての物質的基盤、第四に未分化な機能複合である、 というのが清水理論である。このような四要因が解体する時、大家族の統一性は消滅して、個人は大家族の集団的拘束から解放される。これが大家族から小家族への移行、すなわち家族の近代化にはかならない(pp.143-4)。

第4章は、家族の機能についての考察である。清水は前章において、大家族から小家族への移行は家族機能の分散化によって起こったものであると結論した。では、機能の複合はなぜ大家族をつくり出し、機能の分散化はなぜ小家族をつくり出したのであろうか.清水によれば、家族の機能は多数あるが、それらは家族に固有の機能と、家族に固有でない機能とに分けられる。

家族に固有の機能を、清水はマードックにしたがって、性的関係の規制、生命の維持、種の再生産、文化の伝達、の四つとする(p.162)。 これらは、マードックが核家族の機能としてあげたものである。つまり清水のいう家族に固有の機能とは、核家族の機能にはかならない。核家族は近代家族だけのものではなく、未開社会にも核家族はあるし、未分家族や家父長制家族の中にも複数の核家族が含まれている。だからこれら四つの機能は、古今東西いかなる家族でも達成されている。これに対して、家族に固有でない機能として清水があげるのは、政治的機能、経済的(生産的)機能、および宗教的機能である。これらは歴史的に大家族が引き受けてきた機能であり、大家族はそのゆえに大家族であったのであるが、家族でない集団や組織が発達してくればそれらが受けもつことができる(pp.155-61)。それゆえ社会の機能分化が進めば、それらは家族から離れていった。古代・中世家族から近代家族への発展とは、 この後者の諸機能が家族から外部社会一政府や企業や宗教団体などに委譲されていった過程にはかならない。



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